1901年(明34)矢島誠進堂刊。三宅青軒の得意な一人称「われは」で語る格調高い「である」文体。先に読んだ『不思議』もそうだったが、奇をてらうタイトルをつける傾向がある。今回もふと主人公が見染めた美人女性が見かけによらず男勝りの身体能力を有している。その父親は「博愛団」という貧者病者のための施設を運営する代議士だが、高利貸の華族と対立し、告訴され収監されるうちに獄中で自殺する。その復讐をする手段が奇想天外なのが読者の興味をそそるが、一人称の主人公は目撃者の立場であり、真相は最後まで明かされない。奇怪な事象を連続させると説明の付けようがなくなるのか、早々の幕引きとなる。☆☆☆ (追記)社会的な罪…