治承三年十一月二十日、 清盛の軍勢は法皇の御所を取り囲んだ。 「平治の乱の時と同じように、御所を焼打ちするそうだ」 という流言が広がって、 御所の中は、上を下への大騒ぎとなった。 その混乱のさなかに、 平宗盛が車をかって御所へやってきた。 「急いでお乗り下さい。お早く」 単刀直入の宗盛の申し入れに法皇も驚かれた。 「一体何事が起ったのじゃ、 わしに何か過失があったとでもいうのか、 成親や俊寛のように遠国へ流すつもりなのだろう? わしが政務に口を出すのは、まだ天皇が幼いからじゃ、 それもいけないというのなら、 以後、政治には関りはもたぬことにしよう」 「いや、そのことではないようでございます。 …