はかなしや 人のかざせる あふひ故《ゆゑ》 神のしるしの 今日を待ちける 祭りの日 源氏の車に 場所を譲る源典侍(げんないしのすけ)の歌🌹 〜あら情けなや、 他の方が葵をかざして乗り合わせているとは。 神の許す今日の機会を待ちわびていましたのに。 【第9帖 葵 あおい】 今日も町には隙間《すきま》なく車が出ていた。 馬場殿あたりで祭りの行列を見ようとするのであったが、 都合のよい場所がない。 「大官連がこの辺にはたくさん来ていて面倒な所だ」 源氏は言って、 車をやるのでなく、停《と》めるのでもなく、 躊躇《ちゅうちょ》している時に、 よい女車で人がいっぱいに乗りこぼれたのから、 扇を出して源氏…