誰にでも覚えがあるはずだ。静かな時間、気が抜けた瞬間、あるいはまったく関係のない日常の中で、ふとよみがえる過去の出来事。その中でも特に強く心を揺さぶるのが、「怒り」の記憶である。数年前のあの一言。納得のいかなかったあのやり取り。理不尽な仕打ち。忘れたつもりでいたのに、まるで昨日のことのように生々しく心に浮かび、再び怒りの炎が燃え上がる。これがいわゆる「思い出し怒り」である。 この思い出し怒りのやっかいな点は、すでに終わった出来事であるにもかかわらず、感情だけが今ここで再燃してしまうことである。実際にはもう解決していたり、もう関わる必要のない人とのやり取りだったりすることも多い。それなのに、怒り…