行介の受け持つ組で級長をしている君塚きぬ子は、生活苦から大阪の芸者屋へ「下地っ子」として売られていきました。行介は大阪の警察に知り合いがあったことから、抱え主に掛け合ってもらい、二年間での借金返済を条件にきぬ子は東京に戻りますが、父親は彼女を精工舎で働かせます。学業の継続を願う行介は、14歳になっているきぬ子を「夜学の尋常科」に入れる手続きを取りました。 尋常夜学校は学齢になっても小学校にはいらなかったもの、昼間働いているために通学出来ないもの、そういう人達を重(おも)に収容していた。だから二十で尋常一年生というような生徒もいた。そして一つの教室に各学年の生徒が雑居しているから、一方で五年生が…