日本語は「純粋」や「素朴」という言葉が都会よりも田舎と結びつけられやすい。なぜだろう。純粋に華やかさに惹かれて都会へ出てチャラチャラすることもあるだろうし、素朴にムラムラして田舎の野道ですれ違った女性を襲うこともあるだろう。この小説は、わたしがかねがね不思議だなと思ってきたことが書かれていました。わたしは洗練と粗野のグラデーションの中間にあるマジックワードが苦手で、いつもうまく使えません。サンスクリットの辞書を引いていると、人間の性質を示すときに使う「純粋」は「生まれたての」というよりも「浄化された」「洗練された」「聖性の」というふうに自ら不浄や悪魔性の存在を認めたうえで清くなろうとする主体性…