春のある日、ある大学の講師控室に行くと、国文学者で詩人でもあるF先生が、ソファーで本を読みながら、にやにやしていた。 私「こんにちわ・・・せんせい・・・何かいいことが書いてあるんですか?」 F「お、のりもくん。こんにちわ。 いえね、久しぶりに子規の『墨汁一滴』を読んでたらね。 子規が会席料理を食べるということの記述があってね、 そのときに、伊藤左千夫や岡麓と食べたっていう料理がでてくるんですよ・・・ それが・・・おもしろくってね。 ちょっと読んでごらん?」 私「ええっと・・・『左千夫来り・・麓来る。・・・五時頃料理出ず。 麓主人役を勤む。献立左の如し。 味噌汁は三州味噌の煮濾、実は嫁菜、二椀代…