扉は高くて広く、敷居も厚くて重く、縦に4畳ほど敷いてあった。縁のない畳は緑色で新鮮であった。部屋には何もなく、上に小さな机が置いてあるだけであった。ビヤホールの巨大な掛け時計の針はあと五分で三時を指そうとしていた。文字盤の下には二匹のライオンが向かい合って立ち、交互に身をくねらせながらぜんまいを回していた。どちらも雄のライオンで尻尾がコートかけのような形に曲がっていた。やがてノーノが終わって次はデレク・ベイリーの「Guitar, Drums 'n' Bass」がかかった。 これはデレク・ベイリーの渾身の失敗作なのだが、その愛らしさがたまらなくて、あまり聞かないオールタイム・フェイバリットの一つ…