岡村民夫 (2024年10月30日刊行、水声社[水声文庫]、東京, 290 pp., 本体価格2,800円, ISBN:978-4-8010-0829-8 → 目次|版元ページ)読了。日本各地の温泉と文学作品との関係を詳細に論じている。漱石が通い詰めた道後温泉や熊本の温泉群を舞台とする第1章と、彼が伊豆の修善寺温泉や湯河原温泉に場所を移した第2章の結論として、「夏目漱石こそ『本格温泉小説』の開祖と考えられるのだ」(p. 80)という評価が下る。川端康成を論じた第3章では、伊豆・湯ヶ島温泉と湯ヶ野温泉での『伊豆の踊子』と、越後湯沢温泉での『雪国』などから、「漱石が本格温泉小説の祖とすれば、川端は…