【源氏物語220 第十帖 賢木32】 心細くて人間的な生活を捨てないから ますます悲しみが多いのである、 自分などは僧房の人になるべきであると、 こんな決心をしようとする時に いつも思われるのは 若い夫人のことであった。 優しく自分だけを頼みにして生きている妻を 捨てえようとは思われないのであった。 宮のお心も非常に動揺したのである。 源氏はその時きり引きこもって手紙も送って来ないことで 命婦などは気の毒がった。 宮も東宮のためには 源氏に好意を持たせておかねばならないのに、 自分の態度から人生を悲観して 僧になってしまわれることになってはならぬと さすがに思召すのであった。 そうといってああ…