二〇二一年が終わろうとしている。人間の記憶をおぼろにしてしまうのに、半年という時間は充分だ。オリンピックは今年のことであったか。半年も経たないのに、昨年の事のように思える。「東京2020」という変更のなかったタイトルが余計にその混乱を招いているのかもしれない。 畳に炉が切られている。 茶室のしつらえは、半年毎に大きく変わる。炉と風炉だ。風炉は五月から十月、畳の上に釜を置く。炉は十一月から四月、畳が切ってあり、畳の面より下に釜が置かれる。夏は涼しく、冬は温かく茶を楽しむためのものだ。そして、当然それに合わせてお点前も半年毎に変わる。釜を置く位置が変わるのだから、柄杓でお湯を汲む、その汲み方も変わ…