【平家物語36 第2巻 烽火〈ほうか〉】 宿所に帰った重盛は、主馬判官盛国を呼びだすと、 「唯今、重盛が、天下の大事を聞き出して参った。 常日頃、重盛のために命を惜しまぬ者があれば、 急ぎ集めるように」 といった。この知らせがたちまち広がったから、 日頃、物事に動じぬ人のお召しというので、 まさに天下の一大事とばかりに、 誰も彼も、おっとり刀で小松殿へ集ってきた。 小松殿で何事かが起るという知らせは、 西八条にも届いていた。 西八条につめていた数千騎は、誰いうとなく、 一人残らず、小松殿にとんでいってしまい、 清盛邸はひっそり閑としてしまった。 驚いたのは、清盛である。貞能を呼ぶと、 「一体、…