睡蓮(高知のモネの庭にて撮影) 【第13章 廃墟に築くもの】(2) そんな戦争の雑音も届かないような桃畑の奥で、小さなアトリエにこもって静かに絵を描き続ける桃代は、32歳になっていた。その妹桃代をどうしても大阪にある大学病院の教授に診せたいと言い張る忠明。帰りに倉敷の大原美術館に寄っても良いならと、しぶしぶ承知した桃代に連れられて、忠明は初めて美術に触れる機会を得る。そこで出会ったモネの『睡蓮』に一目で惹かれてしまう忠明。桃代から、中年に名声を得てからの二十何年(桃代の勘違いで、実際は40年)もの間、庭の睡蓮だけを描き続けたというモネにまつわる話を聞き、忠明は思う。(このモネに比べて、自分の2…