明治末期。四国の貧しい漁村。ここで生まれ育ち、その才覚を生かして「日本一のまぐろ王」として成り上がっていく一人の男がいた。しかし、戦争勃発からその華々しい人生は一転。修羅の半生の中で築き上げたものを全て失くした時、男に残されたものは貧しく懐かしい故郷だけであった。男は残りの人生を、この故郷の漁業の復興に賭けることを心に決める。人とは哀しいものだ。失って初めて見えてくるものがある。そして、それこそがその人本来の姿であったりもする。封建的な家父長制の明治末期。大正デモクラシー。悲惨な負け戦を切っ掛けに新たな姿に変わりゆく昭和の日本。その歴史の激しい変動の中を、こんな風に無我夢中で生きて死んだ男がい…