海女 海辺で障子を洗う女たち 【第9章 栄光と汚辱】~忍と大城家の女たち~ やがて時代は昭和に入る。既に五隻の搬送船を持ち、大忠商会は日本有数の規模に育っていた。日本制覇の栄光への入口に立っていたのである。マグロを主力とする回遊魚は春の到来と共に黒潮に乗って北進を始め、北海道沖、千島付近まで行っては、秋が更けると共にまた南に戻って来る。それに合わせて忠明らも移動するのである。その際、初めは小さな旅館に滞在した忠明も、事業が繁栄するにつけ、その地一流の旅館を殆ど貸し切りにして滞在するようになった。贅沢で豪勢な暮らしぶりであった。男たちの夢は『事業』であり、『船』であった。目は外へ外へと注がれ、土…