【第10章 奇妙な商売】 この時代、日本の漁船と言う漁船が大型化して、外へ外へと漁場を広げ、漁獲量を急増させていた。それは大正沚が発見された大正3年の秋に、忠明が予見した通りの進展であった。 (とうとうその時がきた。わしは東へ進出する。北へも伸びなならん。)と、忠明が初めて東北地方への旅に出たのは大正14年の夏であった。豊三郎を連れて、気仙沼、釜石、宮古、八戸…と、東北の主要な漁港を視察。忠明は、そこで「揚げ場ですぐに腹を切り開き血や臓物(ぞうもつ)を出してしまう」という、鮮度を保つためのマグロ処理の見事さを見て大いに感心。そのやり方を早速自分の船にも取り入れ、「大忠商会のマグロは鮮度がいい、…