黒潮の碑文 【第14章 海の墓碑銘】 それから二十何年かが夢のように過ぎた。昭和52年の秋の初めに、海原忍は、大城明夫という差出人からの一通の書状を受け取った。「いつも疎遠にしているのに突然で申し訳ないが。今年は亡き父大城忠明の二十五年忌に当たる。…」に続く文には「法要に来てほしい」という丁寧な誘いの言葉が綴られていた。その忍は今では66歳。谷木龍平の娘、優子と23歳の時に結婚して、現在は、龍平から引き継いだ広告代理店好文社の社長も退いて会長に就任していた。「花岐か、五十年ぶりだなあ」子供時代の遊びや懐かしい風景を思い出したが、それ以上に未だに漁村の味方の忍には、二百カイリ問題がどうあの故郷に…