(考察その3の続き) アリーテ姫はしばしば自分の手をじっと見て、「自分の中にも魔法があるはずだ」と自分の可能性を信じ、そして行動する。 『アリーテ姫』とはあきらめない少女の物語である。彼女は何をあきらめないかって? 自分自身のことを、だ。 だが、現実にあまた存在する人生の中には、そうした自己実現への可能性を口にすることも許されなかったようなものも多くあってしまう。自己実現が成し遂げられる側の河の岸辺にいる人は、それだけで幸運である。その対岸にはどんな不遇さが存在していてしまうのだろうか。さまざまな虐待、あるいは、例えば戦争。*1 心理学者のユングは「中年の危機」を「人生の正午」と名付け、老後に…