モーツァルトがヨーゼフ・ハイドンの作品に啓発されて彫心鏤骨の末書き上げ、その先輩に献呈した六つの弦楽四重奏曲、いわゆるハイドン・セットの中で、最もモーツァルトらしさの感じられるものとして、現在一般的に同セットの第4番に位置付けられている「変ロ長調 K.458 "狩"」を挙げても、大きな異論を呼ぶことはないでしょう。 これに加えて、「狩」「狩四重奏曲(Jagdquartett)」などという標題を持つこともあって、この作品は演奏会や録音などに取り上げられる機会も筆頭ではないかと思います。 もっとも、例によってこの標題はモーツァルトが付したわけではなく、第一楽章の主題旋律が狩猟のときに吹き鳴らされる…