3 蒼き龍の国の国境を密かに越えてから、今日で幾つの朝を迎えたのだろう。 朱ノ夜は深い藍色の空の向こうに薄っすらと太陽の光を滲ませ始めた地平線を、瞬きもせずみつめながらゆっくりと深呼吸をした。 大樹の下で静かな寝息をたてて眠る龍砂王の目を覚さないように最新の注意を払いながら、太い枝に手を伸ばすとするするっと軽やかに樹々を駆け登り、あっという間に天辺に辿り着いた。 見はるかす地上に次第に光が差し始め、辺りの様子が明らかになってくると、ここはすでに黄土国の領土内なのだと朱ノ夜は思った。 黄土国は蒼き龍の国の東にあり、隙あらば侵略しようと常に虎視眈々と狙っている。 千年前の天眼の子の出現の際には国王…