思い出を掘り起こす「もの」があります。 大抵は音楽だったり、映画であったり、贈られた品だったり……。 そして、私の場合は、もう一つ加えなければなりません。「本」です。 こんなことを言い出したのも、急に秋の気配が強まった今日の空気と、大人が誕生日に抱くアンニュイな気分がそうさせているのです。 さて、こんな日には、思い出深い本を書いてみましょう。 ミヒャエル・エンデの『はてしない物語』です。 出会いは高校生の時。 ちょっと腰が引けながらも進入した大学図書室(当時、母校付属の短大)で見つけ、おそるおそる貸出可能か聞いたのです。 大きくて、立派な装幀。絡み合う2匹の蛇が刻印された本を、宝物のように持ち…