らした。しかも、千五百ルーブリの金を持っていた、――一たいそれでは金をどこから持って来たのだ?』と諸君はおっしゃるでしょう。けれど、千五百ルーブリだけ見つかって、あとの半分がどうしても見つからなかったという事実は、その金がぜんぜん別の金、――封筒にも何にも入ったことのない金かもしれぬ、ということを立証するではありませんか。すでに厳密な考究によって証明されている時間から計算しても、被告が女中たちのところから、すぐ官吏ペルホーチンのところへ走って行って、自分の家へもどこへも立ち寄らなかったし、その後も、しじゅう人中に立ちまじっていたことは、予審でも認められ、かつ証明されています。してみれば、被告が…
決を下して、いやが上にその声を挑発し、ますます高まりつつあるその憎悪を受くるなからんことを!………」 一言につくすと、イッポリートは非常に熱してはいたけれど、十分|感動的《パセチック》に論を結ぶことができた。実際、彼が聴衆に与えた印象はすばらしいものであった。彼自身はその論告を終ると、急いで法廷から出て行った。そして、前にも述べたとおり、別室で危く卒倒するところであった。法廷では誰ひとり喝采するものがなかったけれど、真面目な人たちはいずれも満足を表していた。ただ婦人たちはあまり満足もしなかったが、それでも検事の雄弁には感心していた。ことに、その論告の結果を少しも恐れないで、ただフェチュコーヴィ…