過去から今、未来へと移る時の流れ、血縁と地縁に連なった人々の絆、仕事とくらし。原発事故は農民からそのすべてを奪った。(その二)で、そう書いた。 すべてを奪われた人々は「生業(なりわい)を返せ、地域を返せ!」と裁判に訴えた。原告4,000人の訴えは「放射性物質に汚染された地域を事故前の状態に戻せ」であり、奪われた生業を取り戻すためのあらゆる補償である。その痛苦の叫びを理解するためには、農村社会の本質を知る必要がある。 50年前、私は農学校で農の歴史とその社会のありようをこんな風に教わった。ゲマインシャフトとゲゼルシャフト、社会学で使われるドイツ語だという。 農村は「共同体社会(ゲマインシャフト)…