溝口健二”近松物語”をみる 2009-08-23 16:19:39 テーマ: 映画と演劇 この映画の凄いところは、愛の自覚の到来が、義理や人情、恥や道徳、時代の要求する倫理性等、あらゆる規範性を超えるところにある。内面的で、つつましい商家の女将を香川京子が演じているが、この封建的規範を体現したようななよやかな大和撫子型の女性の変貌する姿が、古典を題材にとりながらいかにも現代演劇にしている。商家の女将と手代の道行とは、最初から身分違いのゆえに、臣下の忠誠という感情に近かった。勿論思慕の対象が女性であるから、少々のエロティスムは免れない。しかし封建制の人間関係の中で節度をもったものであった。しかし…