片倉 健『樹影』 今しも遠い山の端に没しようとする急角度の西陽に照らされた、農村風景だ。作物や草がすっかり刈りあげられた畑や野原に立木がひと株、異様なまでに長い影を、東に延している。、 人らも家畜たちも機械も、今日を切りあげて帰っていった。大地もまた、一日の役目を了えて、日没までのつかの間をおだやかに安らっているかのようだ。 空や雲や、植林を一部伐採された山の表現には、なにやら新しい絵画の感覚が紛れこんでいる気がする。近景の畑や野や畑中の小径には、明治の御代に西洋絵画を学びに渡欧した先人たちによる、懐かしい感覚が漂っている気もする。小径の先の道具置場か休息所のような小屋は、どことなし西洋風な気…