河川敷に引き上げられた身体には、争った形跡がなかった。衣服は乱れておらず、殴られた痕も刺された痕も見当たらない。誰かに突き落とされたのでも、暴行を受けたのでもない。自分から川へ入って戻れなくなった人、という説明で全部の辻褄が合ってしまう。警察の見立てもそこへ落ち着きかけていた。 解剖を担当した山田朝顔が胃の中から拾い上げたのは、一センチ半ほどの発泡ウレタンの粒だった。溺れたときに飲み込んだ水に混ざっていた泥や葉とは違う。人が口へ入れる理由の思いつかないものが、なぜ食道を通って胃まで下りていたのか。 遺体を確認しにきた男の振る舞いにも、朝顔は引っかかりを覚える。悲しみ方が足りないのではない。悲し…