故吉田秀和氏が、この楽章の後半で穿つ連打音やトリルが神がかっている、という様な事を何かで述べられていた。また僕の学生時代、フランスでフーガのレッスンを受けた際、声部が離れ過ぎると「ベートーヴェンのようだ」と先生から皮肉られたが、それはこの楽章の事だろう。…ベートーヴェンの最後のピアノソナタ、第32番の終楽章を暗譜した。C dur! 単純な一音一音が重い、深い。 「ハンマークラヴィーア・ソナタ」の終楽章が対位法の極限をさらに破壊し、難解な不協和音、複雑な構成の大暴れするフーガだったのに比べ、こちらは第1楽章にコンパクトなフガートがあるものの、終楽章ではフーガの様な模倣対位法を封印し、浄化された音…