裏庭日記 われわれという辞がいやで、つねに単数形で生きてきた なにをかたるにもひとつに限定してからでなければ安心できない おれたちや、ぼくらといった主語を憎み、空中爆破したくなる おれは決しておれたちじゃないし、 おれは決してぼくにならない あらゆる咎、そのどれともちがう声音で、 おれは喋ってきたし、裏庭を見ながら、 父の暴虐に耐えて来た かの女たちはもはやどこにもいない スタンドにも学校にも、あの長い修学旅行にさえも 終わってしまった時代、その光景を映写しては頭脳に水が湧く 閃きのなかでもどらないまぼろしを追いかけようと足搔くおれ 友だちなんかいなかった、仲間なんかじゃなかった多くのひと 夢…