風 先づ動くことだ 形無くも 動けば形あるものを動かし 動かされている形あるものを見て 動いているものを 感ずるに至る 動きを感ずれば共感していよいよ動き 天地にある穴 皆声を発す 竹も戸板も水も 音をたてて動くことを後援する 土も舞い 木も飛ぶ 家もゆらぐ 電線まで音を出して共感する ――天地一つの風に包まる 先づ動くことだ 隣りのものを動かすことだ 隣りが動かなければ先隣りを動かすことだ それが動かなければ 次々と 動くものを多くしてゆく 裡に動いてゆくものの消滅しないかぎり 動きは無限に大きくなってゆく これが風だ 誰の裡にも風を起す力はある 動かないものを見て 動かせないと思ってはいけ…