ξ 個人とは、具体的には、心と身体という二重性によって成立する。 これほど当然なことはない。 しかし、この国では、これはけして当然ではない。 江戸つまり近世以降の日本では、「個」は心によってのみ、成立することになった。 そこでは中世的身体が排除されたからである。・・・ 心によって成立する個は、さらに社会的に成立する個と、自己が想定する個とに分かれる。 社会的に成立する個とは、たとえば封建的諸身分であり、現代であれば、名刺の肩書きにその命脈を保つものである。・・・ はじめに述べたように、個は心と身体という二重性からなる。 にもかかわらず、その身体が江戸期では心に対して従となり、しだいに消し去られ…