■ 藤村の『夜明け前』を加賀乙彦氏は日本の近代小説の白眉、と評している(NHK人間大学テキスト「長編小説の楽しみ 世界の名作を読む」1994年10月から12月期)。一方、高島俊男氏は『お言葉ですが・・・』(文藝春秋1996年)で、この長編小説について**へたくそな小説で、あんなものを名作という人の気がしれないが(後略)**(68頁)と手厳しい評価をしている。これは極端な例だろうが、評価は人それぞれだ。空海に対する評価然り。『空海の風景 上下』(中公文庫)の再読を終えた。今回の再読で、司馬遼太郎の空海評はあまり芳しくないことに気がついた。**もし空海が大山師とすれば、日本史上類のない大山師にちが…