🌷頭中将《とうのちゅうじょう》の耳にそれがはいって、 源氏の隠し事はたいてい正確に察して知っている自分も、 まだそれだけは気がつかなんだと思うとともに、 自身の好奇心も起こってきて、 まんまと好色な源典侍の情人の一人になった。 この貴公子もざらにある若い男ではなかったから、 源氏の飽き足らぬ愛を補う気で関係をしたが、 典侍の心に今も恋しくてならない人はただ一人の源氏であった。 困った多情女である。 きわめて秘密にしていたので頭中将との関係を源氏は知らなんだ。 御殿で見かけると恨みを告げる典侍に、 源氏は老いている点にだけ同情を持ちながらも いやな気持ちがおさえ切れずに長く逢いに行こうともしなか…