涙の理由 その日、友人たちが手料理を持ち寄り、わが家のバルコニーに集まった。 がん闘病中の千恵は、珍しく、ほんの少しだけお酒を飲んだ。 ほろ酔いの千恵は上機嫌だった。三線を持ち出し、「童神」を歌った。 日も暮れて、台所で片付けをしていると、そこに千恵がいないことに気づいた。 はなと一緒に探した。 千恵は襖の向こう側の和室で横になっていた。 「どうしたの?」 理由を聞くと、千恵は涙声で答えた。 「みんなが片付けをしてくれているのに、体がきつくてできない。普通のこと、あたり前のことができない自分が情けなくなってしまって。ごめんね」 4歳のはなにも伝わったのだろう。 小さな手で千恵の頭をなでていた。…