音楽に触れて、何かが“動かされる”という体験は、そう多くはありません。笹川美和の音楽には、メジャー・マーケットの流行とは一線を画す、芯の通った「静けさ」と「語り」があります。そこには、派手な装飾や過剰な自己演出を排し、ただ「伝える」ことに徹するような覚悟と潔さが見えます。 アルバム『事実』は、そんな笹川の姿勢を端的に示す作品です。当時20歳の彼女が放った衝撃的なデビュー作であり、クラシックや民謡の要素を取り入れた独自の世界観で高い評価を受けました。社会の喧騒や情報の洪水の中にあっても、心の声に耳を傾けることの大切さ──『事実』はそんなテーマを、静かに、しかし確実に私たちの胸に問いかけてくる一枚…