地上の星座:牧逸馬 1932年(昭7)5月~1934年(昭9)5月、雑誌「主婦の友」に連載。 1934年(昭9)新潮社刊。 「丹下左膳」の作者として有名な林不忘は、牧逸馬という別の筆名を使って昭和初期の現代小説家として多様なジャンルを跨いだ言わば「天衣無縫な」文人だったと思う。この作品は、明治期の菊池幽芳や渡辺霞亭などによる家庭や家柄の悲劇を描く伝統を継承しており、2カ年にわたる連載というかなりの長尺の昭和期の家庭小説だった。丁寧な経過描写の積み重ねは油絵の絵具の塗り重ねに通じる重厚感があった。 地上の星座:牧逸馬、林唯一・画 老練な政治家の令嬢として何不自由なく育った瑛子、その家に書生として…