二―チェの主著の一つ「ツァラトゥストラかく語りき」は、私の場合、遠い昔に買った中公文庫「ツァラトゥストラ」(手塚富雄訳)が、今も拙宅の本棚にある。手塚さんはゲーテやリルケなどのドイツ文学の翻訳をなさっていた。 「ツァラトゥストラかく語りき」は哲学書に分類されるが、ニーチェは文学者でもある。本書も物語風だ。大学のとき、第二外国語に選んでしまったドイツ語の教授が、ニーチェの文章は力強く美しいと力説していたのを覚えている(この講義で覚えているのは、それくらい)。 しかも箴言集のような構成が多く、引用されやすい。哲学書の一部を抜き出して語るというのは、品がないし危険ですらあると思うが、今回はそれをやる…