序章 水曜日の来訪者 春の柔らかな日差しが降り注ぐ1986年3月26日、水曜日のこと。7人の大学生が小さなボートに乗り、静かな海を渡って孤島・角島へとやって来た。彼らはミステリ研究会に所属しており、この島に建つという奇妙な館に興味を惹かれ、春休みを利用して訪れたのだった。 ボートを降り、浜辺に立つ。周囲を見渡しても、人影は見当たらない。 「本当に誰もいないのかな?」 小柄な女性、エラリイ・クイーンが不安げに呟いた。 「大丈夫だよ。この島には中村青司さんという画家が住んでいたらしいが、今はもう誰も住んでいないはずだ」 リーダーのオルツィ・ルルウが彼女を安心させるように言った。 彼らは浜辺から少し…