1979年に起きた三菱銀行人質事件は、その残虐性において、日本の人質犯罪史上最悪でしょう。猟銃で脅しながら、人質銀行員に同僚の耳をナイフで削ぎ落させ、女子行員を裸にして並ばせ、肉の盾にしています。犯人の梅川は42時間もの長時間、一睡もせず銀行内に立てこもり、40名近い人質たちを恐怖で支配していました。 この記事で取り上げる本は「破滅」(毎日新聞社会部編、幻冬舎アウトロー文庫)です。特に、この残酷な犯罪者の梅川昭美がなぜ現れたかに注目します。 梅川昭美は広島県大竹市に1948年に生まれます。梅川の父は「鄙にはまれなダンディな男」だったらしく、外面ばかりいい浪費家でした。椎間板ヘルニアで大竹市の工…