誰かの話にふんふんと相槌を打とうとして、急ブレーキを踏むことがある。相手がさらりと口にしたことの中に、自分の感覚や常識との相違を感じたときだ。相手はこちらがそんなところにひっかかりを覚えたとは思いもせず、話をつづけている。しかし、私は心の中でその違和感の正体を探らずにいられない。先日あるエッセイを読んでいて、そういうことがあった。まず、こちらのテキストをお読みいただきたい。「読んだけど、これがどうかした?」という方は逆に、これから私が書く文章に違和感を覚えるのかもしれない。上記は女優の鈴木保奈美さんの初エッセイ集『獅子座、A型、丙午。』に収められた一話である。中学生の娘が友人数人と花火大会に出…