さてここまでは前段であって、今回からようやく本題に入る。 河原者や非人といった中世被差別民であるが、彼らを社会的にどう位置付けるか、という研究は昔から続けられてきた。ざっとであるが、研究史の変遷を辿ってみよう。 戦前から戦後にかけては、「被差別民は、元々は異民族であった」という論が主流であった。有名なものに在野の民俗学研究者、菊池山哉(さんさい)がいる。全国の被差別部落700余りを踏査し、「東北の蝦夷の一部が俘囚(ふしゅう)として畿内や西日本に移住させられ、賎民にされた」という説を唱えたのである。だがこれらの異民族説は、現在からみるとどれも研究水準は怪しいものであった。 50~60年代になって…