2019年2月号掲載 毎日新聞夕刊報道グループ記者(当時)/藤原章生 若槻泰雄さんが亡くなった。海外への移民や引き揚げ者の問題をめぐって政府を厳しく批判し、日本人とは何かを問うてきた大人(たいじん)だ。国家賠償訴訟にも積極的に関わってきたため、政府にすり寄る御用学者とは全く逆で、長く執筆を歓迎される立場にはなかった。この人の著作が忘れられ、消えていくのが私は残念でならない。 最初にお目にかかったのは2001年の8月だった。若槻さんは「外務省に消された日本人」という本を毎日新聞社から出版したばかりで、私はご自宅で初めてインタビューした。記事は短いものだったが、当時77歳の若槻さんの甲高い熱っぽい…