《昭和天皇が『独自録』のなかで、「私が最後までノーと言ったならばたぶん幽閉されるか、殺されるかもしれなかった」という意味のことを語っています》(半藤一利『昭和史』(平凡社)、p. 500) が、『昭和天皇独白録』(文春文庫)を見る限り、これに該当する箇所は見当たらない。 それはそうだ。半藤氏が言う『独白録』とは、世間にほとんど知られていない、英語版の『独白論』のことだからである。実は、『独白録』には日本語版と英語版の2つがあり、著者も異なる。どうしてこのようになったのかと言えば、作成の意図が異なるからだ。勿論、日本語版『独白録』は、昭和天皇の戦争責任を免じるために国内向けに作成されたものだが、…