ジャンルとしては学術書だけど記述は物語形式で、どちらかというと「古代中国の市民生活を題材にした短編小説集」に近い。文体もシンプルで読みやすく肩ひじ張らずに楽しめるし学術的な小難しい話もそんなに多くない。ちょっとでも古代中国に興味がある人(例えば原泰久『キングダム』やKOEI『三国無双』などで興味を持った人)にもお勧めしたい一冊。もちろん、物語だからといって近年の研究の専門的な見識をないがしろにしているわけではなくて、古代の墓の中から出てきた副葬品などからわかった民衆の生活が生き生きと(そしてどこか薄暗く)描かれている。ただ、通常の小説のように特異な事件が起きたり、話のオチがついたりしていないパ…