木崎喜代治氏の『マルゼルブ フランス18世紀の一貴族の肖像』(岩波書店、1986年、以下『マルゼルブ』と略記)を読んだ。著作や建言などを交えながら、18世紀フランスの政治家クレチアン=ギヨーム・ド・ラモワニョン・ド・マルゼルブ(1721年~94年)の一生を追った研究書だ。今回も2回に分けて、その問題点や内容を紹介したい。 出版監督の視点から問題点を取り上げた『マルゼルブ』 さて、1750年代にマルゼルブはDirecteur de la librairie(出版行政の監督)を務めており、当時の出版システムの詳細や当事者の考え方を知るという意図から、この作品は、これまで何度も読んでいる。今回再度こ…