前回、『詩と詩論』同人の竹中郁が実際にパリのシェイクスピア・アンド・カンパニイ書店を訪れていたことを既述しておいた。それは昭和三年から四年にかけて、洋画家の小磯良平と渡欧し、パリに滞在し、ジャン・コクトーとも会っていた頃だと思われる。 その帰国後に上梓したエスプリ・ヌーヴォーの輝かしい業績とされる詩集『象牙海岸』(第一書房、昭和七年)は未見だけれど、戦時下に刊行された『龍骨』を入手している。例によって浜松の時代舎で見つけた一冊で、戦時下の詩集と思われないほどの鮮やかな紋様の装幀となっている。それはこの詩集の一章が「首里逍遥」と題されていることから類推すると、沖縄の紋様ではないかと考えられる。(…