あとへあとへと悲しいことが起こってきて、 もう苦しい経験はし尽くしたような私ですから しきりに出家したい心も湧《わ》きますが、 鏡を見てもとお言いになったあなたの面影が目を離れないのですから、 あなたに再会をしないでは、それを実行することもできません。 何の苦しみよりも 私にはあなたと離れている苦痛が最もつらいことに思われます。 あなたにまた逢うことができれば、 ほかのいとわしいことは皆忍んでいこうと思います。 はるかにも 思ひやるかな 知らざりし 浦より遠《をち》に 浦づたひして まだ夢の続きで、 明石の浦にまで来ているような気がしてなりません。 こんな時に書く手紙はまちがったこともあるでし…