「これ…だけですか?」 ニクスは顎に手を置いて、目の前のカウンターに並べられた三枚の紙を見下ろしていた。 ミアメールの町に辿り着き、前もって契約していたアパートメントまで行ったのが昨日。 届いていた荷物の荷解きもそこそこに、旅で疲れた身体を固い床で休め、朝一番に来たのがここ、職業斡旋所だ。 担当の職員はニクスに負けず劣らず、困った顔をして頷く。 「海沿いで、このエリア……となりますと募集があるのはこれだけですね。あとは夏季限定の店が多いので」「……なるほど」 いわゆる海の家が多いらしい。 「うーん……」 宿屋、飲食店、土産物屋。それらの働き手募集が書かれた紙をじっくり見聞するが、どうにもピンと…