久しぶりに、読み屋の仕事が舞込んできた。 今回は、ある文芸雑誌が無名新人に出している賞への応募作の一次選考、つまり下読み・粗選りである。賞の基準に鑑みて、箸にも棒にも掛らぬ作品を振い落して、上の選考に揚げる作品を限定する仕事だ。原稿用紙百枚以内という条件で応募された作品群を、これからしばらくの日数かけて、読みに読む作業となる。 世間で無名の文学屋でいると、こういう仕事が回ってくることもある。有名選考委員に、応募全作品をお読みいただくわけにもゆかない。そこで、陰の「読み屋」たちの登場。世間に面が割れていない。それでいて、有名先生がたほどでないまでも、そこそこ腕が立つ。なによりもギャラが安い。 テ…