回りの貸本屋としてたくましく生きるおせんを主人公とする連作時代小説。 おせんの父親は腕利きの彫り師(本の原版となる版木を掘る職人)だったが、本がお上の目に止まり、版木は削られ指を折られる。失意のうちに母は出奔、父は自死することに。 そしてやはり本の世界から離れず、回りの貸本屋となったおせんは、回る先で様々な出来事に出くわし、トラブル解決に一役買ったりしている。 世話になっている地本問屋の主に盗まれた版木(滝沢馬琴の新作!)の行方探しを頼まれたり、遊郭から足抜けした少女(おせんの本を持ち去り)を探して妓楼の破落戸と渡り合ったり、ハラハラさせる展開とともに、その裏に潜む様々な事情がしんみりさせる。…