◆久しぶりに小説を読みました。新聞の新刊案内を見て、作者も作品も初めて知ったのに、なぜか、とても気になっていた、野溝七生子(のみぞなおこ)の『山梔(くちなし)』です。大正15(1926)年に刊行された小説で、以前は講談社文芸文庫から出ていたとのことですが、昨年末ちくま文庫で復刊されました。 ◆436ページの長編ですが、一気に読ませます。近代日本の非人間的な家父長制への、また個性的な生き方を認めない世間への痛烈な一撃として書かれたのではないかと思います。後半の激情に次ぐ激情、涙に次ぐ涙には少々戸惑いましたが、日本の近代文学史を書き換えてほしいと思わせるくらいの作品でした。 ◆古代ギリシアに強く憧…